2013年1月12日から4月7日まで、東京国立博物館で「飛騨の円空展」が開催されるのに伴い、先生には「美術手帖」「美の巨人たち」の取材、また北千住読売文化センターでの講演依頼などがありました。
そのような話があると、先生は「受けたくない!」と私に言われます。そんな時、私はちょっとばかり返事に困るのです。色々な所で先生の名前が出るのは、私たち会員にとってはとてもうれしいことです。友達や家族に、何気なく自慢したくなったりもします。けれど、私が二つ返事で後押しできないのは、今までの取材で、打合せから終了までが、どんなに大変かを知っているから…。先生の気持ちもわかりますが、私はもどかしく思って、先生にはっぱを掛けて、結局今回も依頼のあった3本を受けることになりました。
受けたからには決して受け身にはならず、積極的に物申して全力投球!そんな先生らしい取り組みで、「美術手帖」「美の巨人たち」の取材、文章の校正等は昨年中に何とか終わりました。ただ決して「無事に終わった」と一言では言えない取材でした。取材の様子を掲載しましたので、ご覧ください。
撮影日:2012年12月18日(水)
先生は、護法神の模刻実演、インタビュー、ドラマ仕立ての場面に出る俳優さんへの彫りの指導等を行いました。
撮影は円空小屋、先生の友人のお宅、近くのお寺などで行われ、先生はこの撮影のために、両面宿儺像の模刻をしました。
「美の巨人たち」の放送予定は次のとおりです。
テレビ東京 2013年2月2日(土) 10:00~
BSジャパン 2013年3月3日(日) 10:00~
■円空小屋での撮影風景です。
今回の撮影で、先生は護法神を彫りました。
まずは、ウォーミングアップ!
だんだんエンジンがかかってきました。
さあ、いよいよ撮影スタートです!!
こんな近距離での撮影も
どんな迫力映像になるか楽しみですね!!。
先生は緊張する様子もなく、自分のペースでどんどん彫っていきます。
かなり出来てきました。
あと少しで完成です。
護法神が完成しました!
彫りにかかった時間は、約17分。
あっという間にできてしまいました。
これで円空小屋での撮影は終了です。
←日経映像のスタッフの皆さんと匠琳先生と木遊会会員
■ 両面宿儺坐像の制作風景です。
(撮影で使う両面宿儺坐像を先生が模刻しました。)
初めは、杉で作ろうと思い準備しましたが、赤くなってしまいテレビ映りが悪いので、やり直すことにしました。
上から見るとこんな形です。
せっかくここまでやったのですが、木取りをやり直さなければなりません。
また木取りをやり直すために、伊豆の工房へ行って、長さ3メートル、直径50センチの木曽檜の丸太を1メートルに切断しています。
高価な材料を切断しました。
これから、木取り、製板を始めます。
いろいろ方向を見ながら墨付けをしました。
製板した丸太です。
おおまかに木取り、製板したものを平塚の工房に持ち帰りました。 彫刻を始める前に裏を平らにします。
撮影日まで、あと10日ほどしかありません。
何とか間に合わせたいのですが、他の仕事の合間にやらなくてはならないので、大変です。
裏をノミで成形しています。
(円空はナタで成形しています。)
先生は、刃渡り15センチの平ノミを使って成形しています。
これの方が早いそうです。
大きなノミでどんどん削っていきます。
こんなナタのオバケのようなノミを使える人はなかなかいないでしょうね~
こんなノミを発注されて、鍛冶屋は「こんな大きいのをつくったのははじめてだ。ポパイが使うのか!」とビックリしていたそうです。
円空が彫り始めたと推察される手順で、始めました。
時間がないので、早く彫りたいのですが、模刻は正確に彫らなければならないので、とても時間がかかり大変だそうです。
それでも先生は、撮影に間にあわそうと必死に頑張っています。
結果は… 間に合いませんでした。
膝と胸の部分の模刻を終えただけで、岩座と顔や光背は荒彫りのままで終わりました。
その未完成のまま、ドラマに使うことになりました。
■ドラマの撮影風景です。
先生の彫った両面宿儺像を使って、いよいよドラマの撮影開始です!!
先生の同級生の松下さんのお宅をお借りして、囲炉裏(いろり)の前で、撮影がスタートしました。
先生が彫ったものを使って、俳優さんが彫るマネをします。
マネといっても、実際に彫っているところを撮影しました。差し支えのないところを彫るということでしたが、実際に彫ってしまい、メチャクチャになってしまいました。
せっかく苦労して彫ったのですが、もう模刻には使えなくなってしまい、先生はガッカリしていました。
でも、どんなドラマになるのかとても楽しみです!!
取材日:2012年12月1日(土)
円空小屋に彫刻家の棚田康司さんが来訪され、山田匠琳先生の指導のもと、円空仏の制作を体験しました。
その様子は、『美術手帖』2013年2月号(1月17日発売) 発行:美術出版社 に掲載予定です。
■円空小屋での取材の様子です。
円空小屋に彫刻家の棚田康司さんと美術出版社の方が取材に来られました。
先生が、円空の技法について説明をしています。
先生が、棚田康司さん(写真右)に円空仏の彫りの手順を指導しています。
先生の指導のもと、いよいよ棚田さんが、円空仏を彫り始めました。
なかなか難しいようです。
でも慣れてくると、棚田さんはさすが彫刻家、飲み込みが早いようです。
だいぶ、できてきました。
顔の彫り方を説明しています。
顔を彫っています。
円空模刻像が完成しました!
棚田さんは真剣に先生の話を聞いています。
二人の話はなかなかつきることはなく、日も沈んでしましました。
棚田さんと美術出版社のスタッフの方たち
無事に取材が終わりました。
お疲れ様でした!!
今回取材依頼のあった「美術手帖」「美の巨人たち」のスタッフは、どのような経緯で先生を知り、取材の依頼をしてきたのか?スタッフに尋ねてみると、「美の壺を見て」「ホームページを見て」など、今まで積み重ねてきた実績を元に先生に白羽の矢が立ったことがわかりました。
岐阜方面では、円空仏を模刻したものを彫っている方が大勢いるようですが、今回、その人たちと先生との両方を取材したスタッフの一人が、円空小屋の足を踏み入れて開口一番、模刻を見て「全然違う!」と驚いたように言った言葉が、その場にいた者には一番の褒め言葉に聞こえました。
先生も、「責任を感じるなあ」といって、取材に答えているようでした。先生が長年積み重ねてきた彫りの実績から生まれる自信は、揺るぎないものだと改めて感じました。